株式は売る相手により価額が変わる!?
「第三者に自社株式を売却したいが、いくらで売ったらいいか分からない…」
「子供や孫に非上場の自社株式を異動させたいが、税金がいくらかかるか分からない…」
お客様のお言葉です。
非上場株式は、取引相場がないため時価を客観的に把握することが困難です。そこで、非上場株式を売買する際には、株式の価値を客観的に把握するための価値評価が必要 になります。
しかし、株式価値の評価方法は、株式を売る相手が同族なのか第三者なのかにより異なります。それゆえ、その株式の評価額も売る相手により異なるものになります。
【1】譲渡や贈与・相続により、同族間で非上場株式を異動する場合
株式の売買なのに贈与税?
たとえば親族に自社株式を移す場合には、低い価額で売却したいとお考えの方もいらっしゃると思います。
しかし、同族間では、客観的に評価された株式の評価額よりも低い価額で売買すると、所得税に追加して高額な贈与税が発生する恐れがあります。
株式価値は財産評価で決まる!
同族間で非上場の自社株式を異動させる場合、相続による異動であれば相続税が発生し、贈与による異動であれば贈与税が発生します。また、譲渡による異動であれば、所得税(株式譲渡所得)が発生することがあります。
この場合、株式の客観的な価値は、基本的には相続税財産評価に関する基本通達に定められている「取引相場のない株式の評価の原則」により評価されます。
財産評価基本通達による株価の評価方法と節税ポイント
財産評価基本通達では、株式を発行した会社について、従業員と総資産価額と売上高を基準として大会社・中会社・小会社のいずれかに分類し、それぞれ次のような評価方法を適用します。
1. 大会社
原則として、類似業種比準方式により評価します。 競合他社が株式を上場している場合に適しています。
- 評価ポイント
- 類似業種比準方式による株価評価は、会社の配当額、純資産額、年利益額が算定要素になります。
- 節税ポイント
- 株式異動までに上記3つの算定要素をコントロールし、適切なタイミングで株式を異動させる必要があります。
2. 小会社
原則として、純資産価額方式によって評価します。
- 評価ポイント
-
純資産価額方式による株価評価は、資産及び負債を時価(相続税評価額)に評価しなおす必要があるため、手続きが煩雑になります。
また過去の業績が良好で留保利益が多く純資産額が多額な会社は、評価額が高額になります。 - 節税ポイント
- 株式異動までに、時価の高い資産から低い資産へ組換えを行い、適切なタイミングで株式を異動させる必要があります。
3. 中会社
中会社は、大会社の評価方法と小会社の評価方法を併用して評価します。
- 評価ポイント
- 純資産額(帳簿価額)と従業員数と1年間の取引金額に応じて、大会社と小会社の各評価方法の採用割合を決定します。
- 節税ポイント
- 株式異動までに各評価方法の採用割合をコントロールし、適切なタイミングで株式を異動させる必要があります。
節税対策
株式の異動に伴って発生する税金を抑えるためには、株式異動前からの「株価対策」が必要です。
まずは将来の経営計画を作成して計画的に株価対策を講じたうえで、タイミングを間違えることなく株式を異動させることにより、相続税、贈与税、所得税の大幅な節税を可能にします。
株価対策の一例として、大会社に適用される「類似業種比準方式」で株式価値を評価する場合には、直前期末の利益・純資産・配当の3つがその株式の評価額に大きく影響します。それゆえ株式の評価額を引き下げるためには、先代経営者の引退に伴い退職金を支払ったりレバレッジドリース等を活用したりして、直前期末の「利益」を圧縮することが効果的です。
しかし、同族間で株式を移動する際の株価対策は、画一的なものではありません。
坂守公認会計士・税理士事務所は、お客様の事情を考慮したうえで最適な株価対策案をご提示いたします。
【2】同族以外の第三者に非上場株式を異動する場合
株価=双方が合意した額
第三者間で株式を売買する際の株価は、双方の合意のもとに決定します。
ただし、時価よりも著しく低い価額で売却する場合には、既存株主の保護の観点から株主総会の特別決議が必要となります。特別決議を得ないで売買した場合には、会社法違反になる恐れがありますので注意が必要です。
双方の合意する価額で株式が売買されるといっても、利害の対立する双方が合意に至るのは容易なことではありません。
そこで一般的には、まず株式の客観的な価値を算定し、これを軸に双方の合意できる価額を協議する手法がとられています。
評価方法の種類
株式価値の評価にあたっては、会社の状況に応じて多種にわたる評価方法の中から選択することができます。
坂守公認会計士・税理士事務所では、複数ある評価方法の中から実態に合った計算方法を用いて株価を算定いたします。お気軽にご相談ください。
1. DCF方式(ディスカウントキャッシュフロー方式)
将来の事業計画が明確な企業の価値算定に適しています。
- 算定ポイント
- 計画最終年度の税引後営業利益に減価償却を加算した額(フリーキャッシュフロー)と、会社ごとの割引率がポイントになります。
2. 純資産方式
事業が安定している企業の価値評価に適しています。
- 算定ポイント
- 早期売却価額又は清算価値等の時価純資産をどのように捉えるかがポイントです。
3. 類似会社比準方式
競合他社が株式を上場している場合に適しています。
- 算定ポイント
- 上場している競合他社の絞り込みがポイントとなります。
4. 折衷方式
実態に合うように上記評価方法を折衷する方式です。
- 算定ポイント
- 各評価方法の折衷割合の決定がポイントとなります。
【3】その他財産の評価
坂守公認会計士・税理士事務所では、株価評価だけでなく、企業価値評価や事業価値評価、土地の評価等の各種価値評価業務も行っております。
- 財産評価基本通達に基づく土地の評価
- DCF方式での特許権等の評価 など
内部統制のご相談は、坂守公認会計士・税理士事務所にお任せ下さい。
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